2010年03月13日

公立劇場の役割と、素晴らしい演劇

先日の、Blogに対するリアクションがあったので、それへの応答です。

不満だったことの詳細が二つあることは分かりました。

一つは、「公立劇場が意味不明な作品を創るとは何事だ」ということのようです。乱暴な言い方になっているかもしれませんが、大阪市民の税金を使って、意味が分からない、マニアックな作品を創るのはけしからん、ということなのだと思います。

やはり、同じ疑問を持ちます。つまり、意味不明なことがどうしてそんなにけしからんのか、ということです。それは、公立劇場の役割に反するのか。
極端なことを言えば、公立劇場では現代演劇の最先端を行くような劇はやれない、ということになります。劇団四季や、キャラメルボックスのような分かりやすい芝居をやるべき、ということなのか。
すいません、極端かつ乱暴な言い方ですが、突き詰めればそういうことになるのでは。
少なくとも、『イキシマ』にテーマはあります。分かりやすい意味はなくとも、伝えたいことはあります。テキスト作家、演出家にそれがないということはありえません。しかし、それを一つにまとめたり、押し付けようとすることは極力避けられています。先日も書いたとおり、「観た人が100人いたら、100通りの解釈がある」作品を目指していたからです。

公立劇場は分かりやすいことをやれ、というのは、公立劇場でヌードはダメとか、残酷なシーンはダメ、とか、放送禁止用語はダメ、ということと同じのような気もします。

公立劇場の役割とはなんでしょうか。
まさしく「劇場と演劇の存在意義を世に示すこと」です。その通り。『イキシマ』は、私がチラシに書いたとおり、それを目指していました。どうしたら、劇場と演劇の存在意義を世に示せるのか。その答えの一つが、『イキシマ』です。

もう一つの不満はわかりやすい。「素晴らしい作品には思えなかった」です。やっぱりつまんなかったんですよね。それは残念です。批判ではないのであれば、そういう感想だと受け止めます。

しかし、あえて言えば『イキシマ』は、これまでの舞台芸術の概念を押し広げようと努力して製作しました。既成の演劇の見方では理解不能であったり、意味不明に感じるかもしれない、演劇とも呼べないかもしれないけれども、もはや既存の演劇では、社会とコミットできないのではないか、という危機感が、あの作品を生んだともいえます。
繰り返しますが、どうしたら現代の社会と接続でき、舞台芸術の可能性を見出せるのかを模索した結果であり、自己満足や、内輪のために製作した作品ではない。そういう意味では「演劇ファン」のために製作した作品ではないのかもしれません。

今、関西で上演されている多くの小劇場作品が“ビビッと来る”人たちに、『イキシマ』はさっぱりだったかもしれませんね。それはそうです。私を含めた『イキシマ』スタッフは、ほとんどの今の演劇作品に“ビビッと来る”ことはないのです。
演劇を見すぎて麻痺している、のかもしれませんが、果たしてそれだけだろうか。常に自問自答し、そうではないと思うからこそ、新しい舞台芸術の可能性ってどこにあるのかを探して、この世界で活動しています。

まあ、そうはいっても、精華小劇場でこれから上演される作品が、すべからく『イキシマ』みたいな作品というわけではないです。公立劇場の役割の一つとして、さまざまな現代演劇の可能性を見せることはあろうかと思いますので、もっと、とっつきやすい作品も上演します。

しかし、劇場製作作品は、劇場の最も尖った部分を見せるべきでしょう。それが『イキシマ』であり、私、ということなのだと思います。『イキシマ』のプロデューサーは私でしたから。


posted by 丸井重樹 at 01:10| 京都 ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
首都圏、関西圏では人口規模を背景にポピュラーなものは商業ベースでやれると思うので、公共劇場の役割はそこにはないと思います。
私はイキシマをみておりませんが、様々な方の観劇後想から、地域の才能によるすぐれた作品づくりをしたと受け止めており、関西の実力を国内に示したものだと考えています。
Posted by 高崎 at 2010年03月13日 23:25
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

イキシマの話、3回目。
Excerpt: ------------------------------ #10の観劇インプレッション:「精華小劇場製作作品「イキシマ」」 制作部日誌 3:「何がしたかったのかわからない、という批判」 #10の観..
Weblog: #10の観劇インプレッション
Tracked: 2010-03-15 02:04
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。